全日本建築士会・『合格への鍵』講座

このブログは当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者が総合監修します。

平成29年二級建築士学科試験の講評

本年の学科試験の内容は、一部に、平成24年の試験内容の見直し以降の傾向の延長線上ともいえる過去の問題の出題範囲外からの新規の設問も見られたものの、総じて、大方の問題は、過去の出題範囲内の事項についてのしっかりした知識と深い理解を有していれば正解に至ることのできるものが多く出題されました。

但し、その反面、付け焼き刃的な表面的な知識では解けない問題も多く、従来の出題範囲内の事項について、いかに単なる暗記でない深い理解力と着実な応用力を有しているかが、合否を分ける大きな要因になったものと考えられます。

 

学科 I (計画)

計画の各分野別の問題数は、建築史2、環境工学8、建築計画論8、建築設備7で、各分野からの出題比率は例年通りでした。

概ね各分野の問題は、既出題範囲内からの問題が多く、比較的取り組みやすいものでしたが、日本建築史の問題で出雲大社の様式と特徴についての設問が既出題範囲外からの問いとして出題されました。

また、環境工学で用語の単位の組み合わせに関する問題や壁体の内部温度分布に関する問題が新たな出題形式によるものであったのが注目されます。

更に、建築計画論で事務所建築に関するやや難度の高い問題が出題され、建築設備で用語に関するやや難度の高い問題も出題されたものの、総じて、建築計画論、建築設備では既出題範囲内からの標準的難度の出題が多く、学科Ⅰ(計画)の問題の難易度はおおむね例年並みであったと考えられます。

 

学科 II (法規)

法規の出題分野は、建築基準法とその他の建築関係法とからなりますが、建築基準法20、その他の建築関係法5で、例年通りの出題比率でした。

本年の出題傾向として注目されるのは、特に建築基準法に関する問題で、政令等の規定についての長文の詳細な設問が目立ち、それだけに、詳細な事項についての系統的に整理された理解に基づく、正確な知識の有無が得点に大きく影響するものとなっています。

 

また、建ぺい率、容積率、高さ制限規定に関する計算問題は、ほとんど毎年出題される定番ともいえる問題ですが、本年はこれらについての計算問題として、面積・高さの算定、建ぺい率、高さ制限に関する問題の他、一般構造の採光、木造の構造強度に関する計算問題の計5問が出題され、昨年の計算問題2問に対して大幅に増えたのが注目されます。

 

また、建築関連法規では、近年重視されている建築士法について本年も例年通り2問、いずれも建築士事務所に関する問題で、契約に係わる法改正について問題と管理建築士についての問題が出題されました。

本年の問題では、既出題範囲外の問題として、法改正による問題として、幼保連携型認定こども園、不服申立ての審査請求、特定天井、強化天井等に関する問題の他、近年の大規模木造建築の推進のための法改正による特定避難時間倒壊等防止建築物についての問題が出題されたことは特に注目されます。

本年の試験問題は、以上のように、既出題範囲内からの問題では、条文についてのより系統的に整備された知識を要する問題や既出題範囲外の問題では、近年の法改正に係わる問題を多く含むもので、やや例年よりも難度は高いものであったといえます。

 

学科 III (構造)

構造の各分野からの出題数は、昨年と同様の力学6、各種構造・構造設計13、材料6からなりますが、いずれの分野の問題も、大方の問題は、過去の出題範囲内からの出題で、しっかりした基礎知識、理解力があれば概ね解ける内容の問題でした。

ただし、構造の分野は、元来、単なる表面的な記憶だけでなく、理論に対するしっかりした理解力が欠かせない分野であり、特に本年の各種構造・構造設計に係わる問題では、木造・RC造・S造の各部設計や耐震計画において、しっかりした理論に対する理解力と応用力がなければ解けない問題が出題されたこと、更に近年の傾向として、木造の出題比率が高くなる傾向にある中で、木質構造についての各部構造、耐力壁、構造設計に関する問題が計3題出題されたことは、特に注目されます。なお、材料に関する問題は、おおむね既出題範囲内からの問題でした。

以上のように、学科Ⅲ(構造)の問題としては、総じて、既出題範囲内の事項についてのしっかりした理解力と応用力が身についていれば解ける問題が多いことから、表面的な知識でなく、着実な理論に対する理解力と応用力が身についているか否かが、得点上の差となるものが多く、難易度はおおむね例年並みであったといえます。

 

学科 IV (施工)

本年の試験での各分野別の出題数は例年通りで、施工計画・管理・契約5、各部工事18、その他2でした。施工は出題分野が広く、また記憶しなければならないことが詳細な事項も含めて非常に多いのが特徴ですが、施工計画では、近年の建築士法重視の傾向の一環とも考えられる建築士法上の工事監理の在り方に係わる問題が出題されたのも注目されます。

また、近年、出題頻度の高くなる傾向にある木造に係わる既出題範囲外からの問題が2題出されていたのも注目されます。

その他の問題も選択肢に既出題範囲外からの設問を含む問題も多く見られましたが、いずれの問題も既出題範囲内からの選択肢が解ければ、正答に至ることのできる問題が多く見られました。

総じて、本年の学科Ⅳ(施工)の問題の難易度は概ね例年並みであったと考えられます。

いずれにしても、施工については、詳細な事項についての紛らわしい詳細な設問に対しても正確に解答できるための、広範囲に渡る確実な知識を、現場の経験がない事項についても、いかに着実に整理して身につけておくかが得点のための重要な鍵になるといえます。

 

 学科試験対策上の留意点

近年の傾向として、出題される問題、または問題の選択肢の一部に、既出題範囲外からの設問からなる、いわゆる新規な問題も出題されるようになってきてはいるものの、概して、既出題範囲内からの問題が多く、既出題範囲の事項についてのしっかりした理解力があれば合格に必要な点を得ることは難しくないと考えることができます。

但し、近年の問題は、ただ単に表面的な知識や理解のみでは解けない、応用力を要する問題が少なくありません。各科目ごとによってその傾向は異なるものの、いかにより深い理解力を有しているか、そして、その上に築かれた着実な応用力を有しているかが合格の鍵となると考えられます。

以上から、単に新規な問題に目を奪われた準備や付け焼き刃的な準備ではなく、早期からの計画的な着実な基礎力、応用力の養成が必要となると考えられます。

 

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