全日本建築士会・『合格への鍵』講座

このブログは当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者が総合監修します。

合格への鍵(第11回)~建築士の設計・工事監理に係わる職責~

f:id:zenchikai:20170113152242p:plain

~重要必須事項について、近年の問題を通して解説~

建築士建築士法上の役割については、第3回でも記しましたように設計・工事監理に係わる役割が主なものと位置付けられていますが、設計・工事監理に関する問題は、基本的な重要な問題として出題頻度も高いため、法規の問題の一応の区切りとなる今回で改めて取り上げてみることとします。

 

【問題1】建築物の工事監理・契約に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 工事監理者は、建築物の工事が設計図書のとおり実施されているかいないかを確認しつつ、その工事を設計図書のとおりに行う責任を有している。
  2. 建築基準法においては、建築主に対して、建築士の設計によらなければならない建築物の工事を行う場合、建築士である工事監理者を選任することを義務付けている。
  3. 建築士法においては、工事監理受託契約を締結した時に交付する書面に、工事監理の実施の期間及び方法を記載しなければならないことを定めている。
  4. 工事監理業務については、一般に、「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」が求められており、この義務を怠り損害が生じた場合には、契約に明記されていなくても過失責任が問われることがある。

 

この問題は、平成21年一級建築士計画の問題です。

第3回でも記しましたように、近年、建築士の役割、職責に関する建築士法の問題は、一級建築士試験では、計画の問題として出題される定番となっています。

この問題には、いくつかの建築士法上の重要事項が含まれています。

設問1は、工事監理者は、工事施工者が行う建築工事が設計図書のとおりに実施されているか否かを確認し、建築工事が設計図書の通りに実施されていないと認めるときは、直ちに工事施工者に是正を求め、従わないときはその旨を建築主に報告する義務を有していますが、設計図書のとおりに工事を行う責任は有していないので、設問1は誤りです。

設計図書のとおりに工事を行う責任は施工管理者が有しています。

設問2は、建築基準法5条の4により、必ず工事監理者を選任することが義務付けられているため、設問2は正です。

設問3は、建築士法24条の8により、正です。

設問4は、工事監理業務は民法上の委任行為であるため、善良な管理者の注意義務が求められており、このため、善良な管理者の注意義務を怠ったために生じる契約に明記されていない事項についての過失責任を問われることもあるため、設問4は正です。

 

【問題2】 建築士事務所に所属し、建築に関する業務に従事する建築士に関する次の記述のうち、建築士法上、正しいものはどれか。

  1. 二級建築士は、鉄骨造3階建、延べ面積150㎡、高さ11m、軒の高さ9mの事務所の新築に係る設計をしてはならない。
  2. 二級建築士は、勤務先の名称に変更があったときは、その日から30日以内に、その旨を、免許を受けた都道府県知事及び住所地の都道府県知事に届け出なければならない。
  3. 二級建築士は、他の二級建築士の設計した設計図書の一部を変更しようとするときは、当該二級建築士の承諾を求めなければならず、承諾が得られなかったときは、その設計図書の一部を変更することができない。
  4. 建築士は、工事監理を終了したときは、直ちに、その結果を文書等で建築主事又は指定確認検査機関に報告しなければならない。
  5. 二級建築士は、5年ごとに、登録講習機関が行う所定の二級建築士定期講習を受けなければならない。

 

この問題は、平成25年2級建築士法規の問題です。

先に記しましたように、近年、建築士の設計・工事監理等の職責に関する問題は、一級建築士試験では計画の科目で出題されるのに対し、二級建築士試験では法規の科目で出題されるという違いはあるものの、問題のレベル等についての違いは特にありません。

設問1は、士法第3条第1項によりこの場合の建築物は二級建築士が設計することができるため、誤りです。

設問2は士法第5条の2第2項及び施行規則第8条1項により正です。

設問3は、建築士法における設計変更に係わる規定で、建築士の職責として重要な内容のものが含まれているため、特に留意しておく必要があります。

すなわち、建築士は、他の建築士の設計図書を変更しようとするときは、まず、その設計図書の設計に係わった建築士の承諾を求めなければなりません。

但し、承諾を求めることができない場合(例えば、既に死亡している場合等)や承諾を求めることができても、承諾が得られなかった場合(意見の相違等により)、それでも変更しなければならない理由等がある場合(元の設計図書の通りに工事を進めると危険が生ずる等)には、設計変更をする建築士自己の責任において、元の設計者である建築士の承諾なしに変更することができると規定されているため(士法第19条)、設問3は誤りです。

なお、上記のように、設計変更をする場合には元の設計者の承諾を求めることが基本原則で、承諾なしに自己の責任において設計変更を行うのは、あくまでもやむを得ない場合に限られることに注意する必要があります。

設問4は、士法第20条3項により、建築士は工事監理を終了したときには、直ちに、その結果を建築主に報告しなければならないので、設問4は誤りです。

設問5は、建築士は、3年に一度、登録講習機関の行う定期講習を受けなければならないこととされているため、誤りです(士法第22条の2第二号別表第2(ニ)、施行規則第17条の36)。

なお、定期講習の受講を義務付けられている建築士は、あくまでも建築士事務所に所属している建築士に限られており、その理由は設計、工事監理等を行うことができるのは、建築士事務所に所属している建築士に限られることに関係していることに特に留意しておく必要があります。

 

上記の問題1、問題2は、第3回で解説した問題と併せ、建築士法上の重要な規定に係わるものが含まれており、出題頻度も高く、また、建築士の業務、職責を考える上でも留意しておく必要がある重要事項です。