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全日本建築士会・『合格への鍵』講座

このブログは、原則として毎週金曜日更新を予定しています。当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者が総合監修します。

合格への鍵(第2回) ~新規の問題で出題傾向として定番となりつつある問題は?~

「合格への鍵」講座

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平成21年に一級建築士試験の内容の見直しが行われ、平成24年に二級建築士試験の内容の見直しが行われて以来、必ずしも従来の出題範囲にとらわれない、いわゆる新傾向の問題、新規な問題が出題されるようになってきました。

そして、それらの中でも特に近年の社会状況、技術動向等を反映した問題は、以後、出題頻度も高く、毎年のように出題されるようになってきた問題も見られるようになってきました。

以降に、それらの問題について整理して考えてみることとしましょう。

 

建築士法の重視

建築士の資格試験は、元来、建築士法の規定により行われているものであるため、建築士の試験で建築士法が重視されるのは半ば当然のことと言えますが、近年、建築士の不祥事が社会的に大きな反響を呼ぶなどの結果、建築士の職責、資質を改めて問うための建築士法の問題が重要視されるようになってきたものと考えられます。

平成28年の一級建築士試験においても学科Ⅲ法規で融合問題も含め、5題もの建築士法の問題が出題されており、その他の科目でも学科Ⅰ計画で1題、学科Ⅴ施工でもかたちを変えて1題出題されています。

特に一級建築士の学科Ⅰ計画では、近年、建築士法の問題が出題されるようになってから、毎年出題される定番となった感があります

 

 

【問題】建築士法に基づく建築士の職責、業務等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 建築士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、建築物の質の向上に寄与するように、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
  2. 建築士は、設計を行う場合においては、設計に係る建築物が法令又は条例の定める建築物に関する基準に適合するようにしなければならないとともに、設計の委託者に対し、設計の内容に関して適切な説明を行うように努めなければならない。
  3. 建築士は、違反建築物の建築等の法令違反行為について、指示、相談等の行為をしてはならない。
  4. 建築士は、建築物に関する調査又は鑑定の業務であれば、その業務に関して不誠実な行為をしても、建築士法の規定による懲戒処分の対象とはならない。

  

この問題は、平成27年度一級建築士・学科Ⅰ計画の問題で、設問1は倫理遵守の規定の通りで正しく、設問4は建築士法第21条で規定されている建築士の業務についての全ては倫理遵守の義務があるため誤りとなります。

1回目で述べたように、平成28年度一級建築士・学科Ⅰ計画の技術者倫理に関する問題は、上記の問題を更に発展させたもので、近年、社会状況からも倫理遵守に係わることが重視されるようになってきたことの反映であると考えることができます。

また、平成28年度二級建築士法規では、建築士法に関する問題として、個人としての建築士の規定に関する問題と建築士事務所の規定に関する問題の計2題が出題されましたが、建築士法では個人としての建築士についての規定と建築士事務所についての規定が車の両輪のような関係になっていることからも当然のことと考えられます。

なお、建築士法に関する問題は、一級建築士でも二級建築士の問題でもほぼ同レベルであると考えられます。

 

②建築の木造化の推進

近年、木造の耐震、防火性能の見直しや木造の質感への親しみ易さ等から木造建築が改めて見直されるようになってきているのは周知の通りです。

この傾向は、国土の約70%を占める我国の森林を有効に活用し、保全することによりCO2の吸収等の環境面で一層有効なものにしようとすることにも連なるもので、国の施策ともなっています。昨年は大規模建築物を木造で造る推進策の一環として建築基準法の一部が改正されたところですが、平成28年度の一級建築士試験法規の問題で早々にこの改正点(法27条)に関する問題も出題されています。

以上のように建築の木造化の流れは大きな社会状況、技術状況を反映したもので、建築士試験の問題でも計画、法規、構造、施工の各科目で、今後、幅広く取り上げられて行くことは、間違いのないところであろうと考えられます。

 

③ストック型社会の到来に向けた改修・修繕・再生

スクラップ・アンド・ビルドからストック・アンド・リノベーションへということが近年言われるようになってきましたが、これは高度成長期の「壊しては造る」型の社会からヨーロッパのような成熟期の「改修や修繕により永く使って行く」型の社会への移行を示すものとして使われる言葉で、「良質な社会資産の蓄積」は、国の重要施策の一つともなっており、例えば、近年の住宅の分野で称えられている「超長期住宅」や「100年住宅」もこの流れの一つといえます。

以上から、建築士の試験問題でも計画では改修・再生・転用(コンバージョン)等の問題として、構造では、耐震改修や修繕の問題として施工でも劣化診断や修繕の問題として出題されることが多く、近年これらの問題は、出題頻度の高い問題として定着しつつあるため、留意が必要です。

 

④環境・省エネルギー

元来、環境・設備の分野は、環境・省エネルギーに関する問題が多かった訳ですが、近年は環境問題へ関心が高まるにつれ、また技術の進歩等に伴い、従来に増して環境についての新たな評価手法や省エネルギーについての新たな手法、及びそれらについての用語等に関する問題が新規な問題として出題されるようになってきました。

なお、平成28年度の一級建築士計画の問題として、風の流れ等により冷房の省エネルギー化等を図る建築計画としてのパッシブデザインの問題が出題されましたが、パッシブデザインについては平成28年度一級建築士の設計製図試験の課題条件にも取り上げられていることなど、今後とも充分注意すべき問題であると言えます。

 

⑤少子・高齢化

少子・高齢化は申すまでもなく、我国における最も重要な社会問題の一つであり、高齢者のためのバリアフリー関連の問題も含め、近年は一級建築士試験でも二級建築士試験でも毎年出題されるいわば定番化した問題となっています。

また、近年は一級設計製図試験でも高齢者施設は出題頻度の高い課題となっていますが、平成28年度は少子化関連施設として児童センターが出題されました。

従来、学科試験でもどちらかというと高齢者関連施設が多く出題されてきましたが、今後は学科試験で少子化関連施設の出題が増えてくることも予想されます。

 

以上の他にも、特に一級建築士試験で、問題の数はそれ程多くはありませんが、毎年のように出題されるようになってきた問題として、防災に関する問題、プロジェクトマネジメントに関する問題もあげることができます。

次回より、上記のような近年の社会状況等を反映した問題として定着してきた感のある

問題について、近年の試験問題を通じて、重要必須事項を解説して行くこととします。

 

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