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全日本建築士会・『合格への鍵』講座

このブログは、原則として毎週金曜日更新を予定しています。当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者が総合監修します。

2級総合合格本コース(学科+設計製図セット)

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この他、様々なニーズに対応した講座の詳細は、下記をご参照ください。

二級建築士の講座一覧 29年度講座 全日本建築士会の建築士講座

 

合格への鍵(第17回)~定番となったバリアフリーのための建築各部の寸法等の問題~

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~重要必須事項について、近年の問題を通して解説~

今回は前回に引き続き、高齢化社会にも係わる問題として、バリアフリー化に対応する建築各部の寸法等の問題について記すこととします。

 

【問題1】 車椅子使用者、高齢者等の利用に配慮した公共図書館の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に基づく移動等円滑化経路を構成する傾斜路においては、高さ200mmの段差に対して、勾配を1/10とし、手すりを設けた。
  2. エレベーター内に設ける車椅子使用者対応の操作盤の行先階数ボタンの位置を、エレベーターかごの床面から1,000mmとした。
  3. 廊下の有効幅員を、車椅子のすれ違いを考慮して、1,800mmとした。
  4. 多目的トイレにおいて、内法寸法を2,000mm×2,000mmとし、オストメイト用の流しや車椅子使用者が利用できる洗面台を設置した。 

この問題は、平成26年一級建築士計画の、主として公共建築におけるバリアフリーに係わる問題です。

設問1は、高さ160mmを超える段差に対する勾配は1/12以下としなければならないので、誤りです。

設問2は、車椅子使用者の座面は床面から40cm程度であり、エレベーター内の操作盤の行先階数ボタンの位置は1m程度とするのが適当であるため、正です。

設問3は、車椅子の通行のための廊下の有効幅員は、単独で900mm、人とのすれ違いの場合は1,350mm、車椅子のすれ違いの場合は1,800mm程度以上とする必要があるため、正です。このため公共的な建築物の主動線となる廊下の幅は、1800mm程度とするのが一般的です。

設問4の多目的トイレにおいては、内部における車椅子の転回のために1,500mm×1,500mmの空間を確保し、便器の他、多機能トイレとしてのオストメイト用の流しや車椅子使用者が利用できるよう下部を600mm空けた洗面台を設置する必要があるため、内法寸法は2,000mm×2,000mm程度以上となるため、正です。

 

【問題2】 高齢者や身体障がい者等に配慮した建築物に関する次の記述のうち、最も

不適当なものはどれか。

  1. 車椅子使用者が利用する電灯の壁付きスイッチの高さを、床面から900mmとした。
  2. 車椅子使用者が利用する屋内傾斜路には、高さ1,000mmごとに踊場を設けた。
  3. 車椅子使用者が利用する便所のブースの出入口の有効幅を、850mmとした。
  4. 高齢者に配慮して、またぎやすいように、浴槽の縁の高さを床面から400mm、浴槽の深さを550mmとした。
  5. 高齢者に配慮して、洗面台や食卓の照度を800lxとした。

 

この問題は、平成27年二級建築士試験計画の問題です。

この問題は、主として、住宅などの日常的な生活空間におけるバリアフリーに関する設問からなっています。

 

設問1は、車椅子使用者が利用する電灯の壁付きスイッチの高さは900~1,100mm程度ですので正です。なお、健常者の場合は1,200mm程度が望ましい高さです。

設問2は、車椅子使用者が利用する傾斜路は、高さ750mmごとに踏面1,500mm以上の踊場を設けなければならないため、誤りです。

設問3は、車椅子使用者が利用する便所のブースの出入口の有効幅は、車椅子の出入りのため850mm程度以上必要なため、正です。

設問4は、高齢者に配慮して、またぎやすいように浴槽の縁の高さは低くし、床面から400mm程度以下とし、浴槽の深さは安全のため浅くして550mm程度以下とする必要があるため、正です。

設問5は、高齢者に適した照度は、食卓や洗面台は健常者の2倍程度必要とされ、健常者の場合は200~500lx程度であるのに対して、高齢者の場合は500~1,000lx程度であることが望ましいため、正です。

 

上記問題1、問題2におけるような設問は、近年、バリアフリーに対応するための建築各部の寸法に係わる設問として出題頻度は高いものですが、これら個々の建築各部の寸法については、常に表面的に記憶するのではなく、あくまでも明確なイメージの下にそれらの寸法の意味を理解し、記憶することが肝要です。

合格への鍵(第16回)~定番となりつつある高齢者福祉施設に関する問題~

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~重要必須事項について、近年の問題を通して解説~

少子高齢化の問題が今日的な最重要課題となっていることは申すまでもありませんが、建築士試験の問題としても近年は、特に高齢者への建築的な対応、高齢者福祉施設等の問題は新傾向の問題から出題頻度の極めて高い定番の問題ともなりつつあります。

 

【問題1】 高齢者のための施設や住まいに関する用語とその説明との組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。

 

用語

説明

1.

老人デイサービスセンター

身体上又は精神上の障がいにより、日常生活を営むのに支障がある高齢者等(養護者を含む。)に対し、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練、介護方法の指導、生活等に関する相談及び助言、健康状態の確認等のサービスを、通所方式で提供する施設

2.

有料老人ホーム

医療ケアを必要とする要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とし、入所者がその有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるようにするとともに、居宅における生活への復帰を目指した施設

3.

ユニットケア

入居者10人前後の日常生活の領域を一つのユニットとして位置づけ、各ユニットに個室と他の入居者や介護スタッフと交流するための居間(共同生活室)があり、他の入居者や介護スタッフと共同生活をしながら、入居者の個性や生活リズムに応じて暮らしていけるようにサポートしていく介護手法

 

4.

ハウアダプテーション

既存住宅において、そこで暮らす高齢者等の身体状況に応じて、開口部や通路の有効幅員、段差等の日常生活上の障がいを除去することによって、高齢者等がなるべく在宅のまま住み続けられることを目的とした住宅改造

 

 

この問題は、平成27年一級建築士計画の用語に対する説明の適否を問う問題です。

設問1,3,4は用語に対する説明としていずれも正解ですが、設問2は、医療ケアを必要とする要介護者に対して看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とし、入所者の能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするとともに、居宅における生活への復帰を目指す施設は、介護老人保健施設ですので誤りです。

なお、有料老人ホームは、高齢者を入居させ食事の提供や介護などの提供をする事業を行う施設で、老人福祉施設老人デイサービスセンター老人短期入所施設養護老人ホーム特別養護老人ホーム軽費老人ホーム老人福祉センター老人介護支援センター)や認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居などを除くものをいいます。

また、設問3のユニットケアは、特別養護老人ホームなどが多人数を効率的に介護する傾向を有するのに対して、少人数の各入居者ごとの個性や生活を尊重して介護を行う施設で、設問4のハウアダプテーションは、高齢者・障がい者の生活の充実・向上のために、医療・福祉関係者と連携して住宅改造を行うことをいいます。

 

【問題2】 社会福祉施設等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. ケアハウスは、家族による援助を受けることが困難な高齢者が、日常生活上必要なサービスを受けながら自立的な生活をする施設である。
  2. 介護老人保健施設は、病院における入院治療の必要はないが、家庭に復帰するための機能訓練や看護・介護が必要な高齢者のための施設である。
  3. 認知症高齢者グループホームは、介護を必要とする認知症の高齢者が、入浴や食事等の介護を受けながら共同生活を行う施設である。
  4. 老人デイサービスセンターは、在宅介護を受けている高齢者が、送迎等により通所して、入浴や日常動作訓練、生活指導等のサービスを受ける施設である。
  5. 特別養護老人ホームは、常時介護の必要はないが、自宅において介護を受けられない高齢者のための施設である。

 

この問題は、平成22年二級建築士計画の問題です。

この問題の設問1,2,3,4は正で、設問5の特別養護老人ホームは、常時介護が必要で在宅介護を受けることが困難な65歳以上の高齢者が、入浴や食事等の介護、医師による健康管理や療養上の指導等を受ける施設であるため、誤りです。

 

問題1も問題2もほとんど同様の施設についての正誤を問う設問からなる問題ですが、いずれも高齢者施設についてのしっかりした正確な理解と知識が必要で、単なる表面的な記憶で対応するのは難しい問題であるといえます。

なお、少子化に対する課題は、現在までのところ一級、二級建築士学科試験の問題としてとりあげられた例はそれほど多くはありませんが、平成28年一級建築士設計製図試験の課題として「子ども・子育て支援センター保育所、児童館・子育て支援施設)」が取り上げられるなど、今後は、高齢者福祉施設等と同様に子育て支援施設等に関する問題も多く取り上げられるようになる可能性は高いと考えられます。

合格への鍵(第15回)~耐震改修に関する施工の問題~

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~重要必須事項について、近年の問題を通して解説~

前回(第14回)では、ストックの時代の到来による良質な社会資産の形成に向けた修繕、改修についての実例を近年、試験の出題頻度としても増加の傾向にある施工の問題を通して考えてみましたが、今回は良質な社会資産の形成に向けた耐震改修に関する施工の問題について考えてみることとします。

 

【問題1】 鉄筋コンクリート造の既存建築物の耐震改修工事等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. コンクリートの中性化深さの測定において、コンクリートの断面にフェノールフタレイン溶液を噴霧して、赤紫色に変色しない範囲を、中性化した部分と判断した。
  2. 鉄筋コンクリート造の耐力壁の増設工事において、増設壁の鉄筋の既存柱への定着については、既存柱を斫(はつ)って露出させた柱主筋に増設壁の鉄筋の端部を135度に折り曲げたフックをかけた。
  3. 炭素繊維シートによる独立した角柱の補強工事において、シートの水平方向のラップ位置については、構造的な弱点をなくすため、柱の同一箇所、同一面とした。
  4. 溶接金網による柱のRC巻き立て補強において、流込み工法によってコンクリートを打ち込み、打込み高さ1m程度ごとに十分に締固めを行った。

 

この問題は平成21年度の耐震改修に係わる一級建築士施工の問題ですが、一部に直接耐震改修に関係のない修繕、改修についての設問も含まれています。

設問1はコンクリートの経年により、本来鉄筋の防錆の役割を有するコンクリートアルカリ性が中性化していく現象を問うもので、設問1の記述内容は正です。

また、設問2は耐力壁の増設工事と設問4は柱の溶接金網巻き工法による補強工事の施工法について問うものですが、設問2,4ともに正です。

設問3は、特に柱の靭性を増し、脆性破壊の防止に効果のある炭素繊維シート巻きによる補強では、ラップ位置が同一箇所、同一面に集中すると構造上の弱点となるため、ラップ位置は、柱の各面に分散させることが原則であることにより、設問3は誤りです。

 

【問題2】 耐震改修工事に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 鉄筋コンクリート造の耐力壁の増設工事において、既存梁と接合する新設壁へのコンクリートの打込みを圧入工法で行うに当たり、型枠上部に設けたオーバーフロー管の流出先の高さについては、既存梁の下端から10cm高い位置とした。
  2. 柱補強工事の溶接金網巻き工法において、流込み工法によってコンクリートを打込み、打込み高さ1m程度ごとに十分に締固めを行った。
  3. 既存の柱と壁との接合部に耐震スリットを新設する工事において、既存の壁の切断に用いる機器を固定する「あと施工アンカー」については、垂れ壁や腰壁への打込みを避け、柱や梁に打ち込んだ。
  4. 柱補強工事の連続繊維補強工法において、連続繊維シートの貼付けは、貼り付けた連続繊維シートの上面に、下塗りの含浸接着樹脂がにじみ出るのを確認してから、上塗りの含浸接着樹脂をローラーで塗布した。

 

この問題は、平成25年度一級建築士の耐震改修に係わる施工の問題ですが、設問の一部には、耐震計画についての構造計画の知識を要するものも含まれています。

設問1,2,4は施工法そのものについての知識を問うものでいずれも正ですが、設問3は鉄筋コンクリート造の建築物において柱と同一構面内に垂れ壁や腰壁がある場合には、柱は実質上短柱となり、せん断力による脆性的な破壊が生じやすくなるため、既存の柱と垂れ壁や腰壁の間にスリットを設けることにより柱が短柱となることを避け、耐震性を向上させようとするものです。

この場合に、直接、耐震性に関係する柱や梁への「あと施工アンカー」等の打ち込みは避けるのが原則ですので、設問3は誤りです。

 

耐震改修は、申すまでもなく、現行耐震基準に適合しないこと等により耐震性に問題のある建物を改修して、耐震性を向上させようとするものですが、従前であれば耐震性に問題のある建物は壊して、建て替える事例も多かったものを、耐震改修により当該建物を再利用していく、リノベーションによる良質の社会資本の蓄積の一環であるとも考えることができ、現在の社会状況を反映した問題として出題頻度も高くなっていくことが予想されます。

なお、耐震改修に関する施工上の問題では、単に施工の技術上の知識だけではなく、耐震改修に係わる構造理論に関する知識を要するものもあることに留意し、構造計画と関連した学習をしておく必要があります。