全日本建築士会・『合格への鍵』講座

このブログは当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者が総合監修します。

建築士事務所に関する重要な規定は何か?

建築士事務所に関する重要な規定は何か?

第3回で、個人としての建築士が誠実に仕事をすることと、その建築士の属する建築士事務所がしっかりしていることによって社会の負託に答えることが建築士法の基本理念となっていると記しましたが、建築士法に関する試験問題でも個人としての建築士の在り方についての問題建築士事務所の在り方についての問題とに大別されます。今回は建築士法における建築士事務所についての規定について、本試験問題を基に考えてみることとします。

【問題】次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。

  1. 管理建築士は、その建築士事務所の業務に係る技術的事項を総括する専任の建築士であるが、当該建築士事務所に属する他の建築士が設計を行った建築物の設計図書について、管理建築士である旨の表示をして記名及び押印をする必要はない。
  2. 建築士事務所の開設者が建築主との設計受託契約の締結に先立って管理建築士等に重要事項の説明を行わせる際に、管理建築士等は、当該建築主に対し、建築士免許証又は建築士免許証明書を提示しなければならない。
  3. 建築士事務所の開設者は、建築主から受託した設計の業務の一部を他の建築士事務所に再委託する場合にあっては、当該設計受託契約を締結したときに当該建築主に交付する書面等において、当該再委託に係る設計の概要、再委託の受託者の氏名又は名称等を記載しなければならない。
  4. 建築士事務所の開設者は、設計又は工事監理以外の業務について、建築主から受託する場合にあっては、建築士法に基づく重要事項の説明や契約を締結したときの書面の交付を行わなければならない。

この問題は、平成26年一級建築士法規の建築士事務所に関するいくつかの重要事項を含む問題です。
設問1は、建築士事務所を技術的な面から統括し、管理し、必要に応じて(事務所の開設者と管理建築士とが異なる場合には)事務所の開設者に、建築士や技術者の配置等、事務所の様々な技術的な事項について意見具申しなければならない重要な立場にある管理建築士に係わる設問ですが、設計図書に記名押印するのは、設計を行った建築士の職責の範囲内のことで、事務所の技術的な面について管理をする管理建築士とは直接関係ありませんので設問の通りです。 

設問2、3も設問の通りです。設問2において、建築士事務所の開設者は建築主との設計受託契約に先立って重要事項の説明をしなければなりませんが、重要事項の説明は管理建築士でなくても他の代理の建築士でも差し支えありません。但し、代理の建築士の説明内容についての責任は管理建築士が負わなければならないことになっている点にも注意する必要があります。 

設問4において、重要事項の説明や契約を締結するときの書面の交付は、設計又は工事監理の業務の場合のみですので設問4は誤りで、他の業務の場合は必要ないことにも注意しておく必要があります。 

以上のことからも、建築士事務所において、建築士の行う業務のうちで設計と工事監理は特に重要度の高い業務に位置づけられていると考えることができます。

【問題】建築士事務所に関する次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。

  1. 建築士は、他人の求めに応じ報酬を得て、建築工事の指導監督のみを業として行おうとするときであっても、建築士事務所を定めて、その建築士事務所について、都道府県知事(都道府県知事が指定事務所登録機関を指定したときは、原則として、当該指定事務所登録機関)の登録を受けなければならない。
  2. 建築士事務所の開設者は、建築物の建築に関する法令又は条例の規定に基づく手続の代理の業務について、建築主と契約の締結をしようとするときは、あらかじめ、当該建築主に対し、重要事項の説明を行わなければならない。
  3. 建築士事務所の開設者は、委託者の許諾を得た場合においても、委託を受けた設計又は工事監理(いずれも延べ面積が300m²を超える建築物の新築工事に係るものに限る。)の業務を、それぞれ一括して他の建築士事務所の開設者に委託してはならない。
  4. 建築士事務所の開設者と管理建築士とが異なる場合においては、その開設者は、管理建築士から建築士事務所の業務に係る所定の技術的事項に関し、その業務が円滑かつ適切に行われるよう必要な意見が述べられた場合には、その意見を尊重しなければならない。
  5. 建築士事務所の開設者は、設計等の業務に関し生じた損害を賠償するために必要な金額を担保するための保険契約の締結その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

問題2は、平成29年度二級建築士法規の問題ですが、この問題には一級・二級建築士建築士法の問題として最も程度の高いレベルの設問と近年の法改正に係わる留意すべき設問とを含んでいます。
設問1は、建築士の行うことのできる業務のうちで、建築士法第21条において、建築士が行うことのできる業務は、「設計及び工事監理のほか、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査又は鑑定及び建築物の建築に関する法令又は条例の規定に基づく手続の代理」と「その他の業務」と規定されており、また、建築士法第23条では、他人の求めに応じて報酬を得て第21条で規定されている建築士の行うことのできる業務の中で「その他の業務」を除く業務を業として行うときは、建築士事務所の登録をしなければならないと規定されています。
すなわち、法21条に規定されている業務の内で、施工管理業務等に該当すると考えられる「その他の業務」についてだけは建築士事務所登録の義務から除外されている訳です。
前回でも述べましたように建築士法上、工事監理と施工管理とは明確に区分されており、設計・工事監理等の業務を行う場合は建築士事務所登録を行う必要がある一方で、「その他の業務」にあたる施工管理を行う場合は建築士事務所登録の必要がないことが建築士法上の重要な基本原則となっている訳です。
ところで、設問の建築工事の指導監督は、建築士法上、建築士事務所登録が必要な業務である訳ですが、具体的にはどのような内容の業務を指すのでしょうか。
建築工事の指導監督は、建築士法21条、23条からは、当然、工事監理や施工管理とは別の業務で、また、建築事務所登録が必要であることから、例えば、委託者側の立場で、セカンドオピニオン的に施工管理を確認するなどの業務であると解することができます。(実際には、特殊な工事等で通常の契約形態とは別にCM(コンストラクション・マネジメント)契約をする場合等にあたります。)

委託者、設計工事監理、施工管理

以上のように、この設問の内容は、単に建築士法上に記載されている事項に合っているか、否かということだけではなく、設計・工事監理や施工管理等の建築の全体構成の基本原則に係わる重要な内容の問題であると考えることができます。
また、設問2における重要事項の説明は、問題1の設問4と同一の内容で、設計・工事監理の場合に限られるため、設問2は誤りです。
設問3、設問4、設問5は正ですが、いずれも平成27年の法改正に係わる設問で、過去に出題されたことのない新規な内容のものです。
なお、設問5における「……の措置を講ずるよう努めなければならない。」は、「……しなければならない。」のような義務規定と異なる努力義務規定であることも留意しておく必要があります。 

以上の問題1、問題2の内容からも、建築士法に係わる問題は、一級、二級の問題で内容・レベルの差はなく、建築全体を考える上で大切な内容を含むものが多い一方で、複雑な例外事項等を含む条文は少なく、比較的勉強し易いものであるともいえましょう。

29年度の一級建築士設計製図試験の総評

平成29年度一級建築士設計製図試験の総評
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小規模なリゾートホテル

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 29年度の一級建築士設計製図試験の課題条件は、概して奇をてらったような条件は含まれておらず、概ねオーソドックスな内容のものであったといえます。
但し、敷地北西側に、直径12mの円が内接する車回しのためスペースを取らなければならないという条件から、単純な長方形の平面による3層の建物を計画することは難しいため、必然的に北東側にL型の平面構成のプランとなります。 L型プランの建物は特に珍しいものではありませんが、一般的に長方形プランの建物に比して、ゾーニングや動線計画がやや複雑になり、難しくなるともいえます。
以上から、この試験では、上記のような平面計画をまとめるための、一定の建築計画力が身に付いているか否かが、重要な評価のポイントとなると考えられます。
次に、本試験の課題条件、計画上の留意点について、以下に記すこととします。

 敷地条件及び配地計画

敷地の北側には道路が面しており、敷地は高低差4mの北側より南側への下り勾配となっていることから、北側道路より建物へのアプローチを取り、北側道路沿いのレベルから南への下り勾配となる部分に地下1階を、その上部に1、2階を各階の階高4mとして設ける定石通りの計画とします。
なお、敷地周辺の景観は南面と東面が最も良好で、西面も湖が望まれる良好な景観とされていることから、リゾートホテルとしての性格上、景観の眺望に充分配慮した計画とすることが重要です。 

配地計画上は、敷地西側の共用駐車場からのアクセスを考慮して、北側の道路からの車のアプローチは、北西側に取ることとなりますが、課題条件より、直径12mの円に内接するスペースの車回しを計画する必要があり、更に2m程度の歩行者用のスペースを確保する必要があることから、最低14m程度は北側道路に対して、建物の北西側は空けておかなければなりません。 

他方、建物の北側壁面の全ての北側道路との間隔を14mとすると、課題条件の建物の延べ面積を確保することが難しくなるため、必然的に、建物の北東側は北側道路寄りとなるL型形状のプランにならざるを得なくなります。以上から建物のプランは、L型形状となり、建物へのメインアプローチは建物の北西側に、管理動線等のサブアプローチは北東側に取ることとなります。 

なお、敷地の条件としての建ぺい率60%は、リゾートホテル等が設けられるような環境の敷地として相応しいものと考えられますが、当然のこととして、平面計画上、充分留意しておく必要があります。

 宿泊室の計画

本課題ではA、B、C、3タイプの宿泊室について、課題の指定数を確保しなければならず、また、リゾートホテルであるが故に当然の事として、全ての宿泊室から良好な景観が望めなければなりません。 

この場合、宿泊室は、東、南または西側向きとし、2階に全ての宿泊室を計画することが、最も望ましい単純明快なプランとなります。それが難しい場合は、次善の策として1階に宿泊室の一部を配置することになりますが、1階は、受付、管理、共用ゾーン等が置かれることから、それらとのゾーニング上、動線上の分離等がプラン上のポイントとなります。

 受付、管理、共用ゾーンの計画

受付カウンター等の受付ゾーンは、管理ゾーンと半ば一体となってホテルの運営、管理を担う重要な部門であり、他方、玄関ホール、ラウンジ等は日常から離れてリラックスするためのリゾートホテルにとって極めて重要な共用部門であるといえます。 

通常これらの部門は一階に設けられ、また、レストラン等も同一階に設けることが多い訳ですが、レストランでは客席は共用部門である一方で、厨房は管理部門であることに動線上注意する必要があります。 

また本課題では、コンセプトルーム(地域特産品、伝統工芸品等に関する小イベント、ワークショップ、交流等の場となる)や地域ブランドショップなども上記に関連して設ける室として特に指定されていることにも留意する必要があります。

 浴室トレーニングルーム等の計画

浴室及びトレーニングルームは、やや機能上性格が異なるため、地階に設けることとし、この場合、併せて、設備機械室等を配置するのが一般的な解といえましょう。 

なお、浴室、トレーニングルームの配置については、1階共用部門との動線上の関連及び景観への眺望や外部リラクゼーションスペースとの関連にも配慮したものであることが求められます。

 パッシブデザインの計画

パッシブデザインについては、採光、通風に有効な吹き抜けを設けること及び太陽熱、地中熱、井水の利用が指定されており、以上の条件は、概ね想定の範囲内の事項ともいえますが、吹き抜けをどのように出来るだけ建物の中心部に有効に設けるかは、建築計画上の重要なポイントとなる事は申すまでもありません。

 設備及び構造計画

設備計画上、本課題では、空調設備は外気処理空調機+ファンコイルユニット方式とすることが指定されていて、それらが設備計画全体と整合していることが求められる点が留意点といえます。 

また、構造計画上の留意点としては、課題条件より敷地の南側が軟弱地盤であり、かつ敷地の勾配形状から建物に偏土圧がかかり、回転モーメントが生じること等が考えられることから、この場合、安定地盤である地中2.5mの深度を底盤とするベタ基礎を採用することが一般的な考え方といえます。

 以上に記したような事項が、本試験の課題条件に係わる計画上の主な留意点として挙げられるもので、いずれも試験の評価項目上の重要ポイントといえますが、中でも最も重要なポイントは、平成21年の一級建築士試験の内容の見直しとして公表された際に空間構成においては足切り点を設けるとされていることからも、建築計画の基本構成が極めて重要な評価ポイントとなると考えられ、本試験では、前述のように、L型形状の平面となった場合の、平面計画上の宿泊客の動線、宿泊客と非宿泊客の動線、管理動線、それらの各部門の明確なゾーニング等の計画が極めて重要なポイントとなると考えられます。

建築士の役割は何か?

建築士の役割は何か?

前回では、近年、新規な問題として出題されたもので、出題頻度が高く、定番のようになってきた問題について概要を記しましたが、今回からは具体的に試験問題を通して記して行くこととします。
まず、近年、出題頻度の多くなってきた建築士法の問題について記すこととしますが、個々の建築士法の問題について考える前に建築士法の骨格についてしっかり理解しておくことが重要です。

委託者、設計工事監理、施工管理

すなわち、通常、委託者(施主)は建物を造るときには、設計を依頼し、その設計に基づいて建物を造ることを施工者に依頼する訳ですが、その場合、施工者側の業務である施工管理に対して、委託者側からの依頼により施工管理が適切に行われているか確認する工事監理が建築士法上不可欠の業務です。なお、工事監理と施工管理とは立場が異なるため完全に区分されていなければならないことを理解しておく必要があります。

工事監理と施工管理とは、言葉としても似ていてまぎらわしいため、実務の世界では、工事監理の監には皿という字が含まれているため、工事監理を施工管理と区分するため、「サラカン」と言ったりする場合もあります。
なお、建設業法上、一定規模以上の工事において必要とされる監理技術者は、施工管理側に置かれる技術者のことで、工事監理側とは無関係であることにも留意が必要です。 

次に重要なことは、設計や工事監理等の建築士法第21条で規定されている業務を行う建築士は、必ず建築士事務所に属していなくてはならないということです。(法第23条)
これは、社会的影響度の大きな建築士の行う主な業務については、個人としての建築士では負担できる責任に限界があるため、必ず組織(建築士事務所)に属している必要があり、個人としての建築士が誠実に業務を行い、その建築士が属している建築士事務所がしっかりしていることが、社会の負託に応えるために必要であるという考え方が、建築士法上の基本理念となっているためです。

このため、建築士法では、個人としての建築士の在り方と建築士事務所の在り方とが表裏一体のように規定されており、それが建築士の試験の問題にも反映されていることに留意する必要があります。 

また、設計・工事監理等の業務については主に建築士法の関係する範囲で、施工監理等については主に建設業法等の関係する範囲であることも理解しておく必要があります。
なお、設計・工事監理業務は、建築を具現化するための計画に係わりの深い業務であるため、建築士法上のこの分野の問題が近年、一級建築士計画の問題として出題されるようになってきたことは当然のこととも考えられます。

【問題】建築物の設計・工事監理の契約に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. 一級建築士の設計によらなければならない建築物の工事において、設計施工一貫の工事であれば、工事監理者を置く必要はない。
  2. 工事監理者は、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに工事施工者に対してその旨を指摘し、設計図書のとおりに工事を実施するように求め、工事施工者がこれに従わないときには、その旨を建築主に報告しなければならない。
  3. 一級建築士事務所において、建築士法で定める重要事項の説明については、管理建築士のほか、当該建築士事務所に属する一級建築士も行うことができる。
  4. 建築士は、建築士事務所としての登録を受けないで、他人の求めに応じ、報酬を得て、設計又は工事監理の業務を行ってはならない。

この問題は、平成26年一級建築士計画の問題ですが、設問1において、上記のように工事監理は不可欠の業務であり、また、設計・工事監理は建築士事務所に属している建築士でなければ行ってはならないので、設計施工の場合は、必ず施工会社は建築士事務所を設立し、設計・工事監理を行う建築士はその事務所に属していることが条件となっています。
このため、1が誤りとなります。 

なお、2、3、4は設問の通りですが、2の設問で工事監理者の指摘したことに工事施工者が従わないときには、その旨を建築主に報告しなければならない(法第18条第3項)という部分を特定行政庁等として誤りの設問として出題されることも多いので、注意する必要があります。

【問題】建築士事務所に関する次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。

  1. 建築士は、他人の求めに応じ報酬を得て、建築工事の指導監督のみを業として行おうとするときであっても、建築士事務所を定めて、その建築士事務所について、都道府県知事(都道府県知事が指定事務所登録機関を指定したときは、原則として、当該指定事務所登録機関)の登録を受けなければならない。
  2. 建築士事務所の開設者は、建築物の建築に関する法令又は条例の規定に基づく手続の代理の業務について、建築主と契約の締結をしようとするときは、あらかじめ、当該建築主に対し、重要事項の説明を行わなければならない。
  3. 建築士事務所の開設者は、委託者の許諾を得た場合においても、委託を受けた設計又は工事監理(いずれも延べ面積が300m²を超える建築物の新築工事に係るものに限る。)の業務を、それぞれ一括して他の建築士事務所の開設者に委託してはならない。
  4. 建築士事務所の開設者と管理建築士とが異なる場合においては、その開設者は、管理建築士から建築士事務所の業務に係る所定の技術的事項に関し、その業務が円滑かつ適切に行われるよう必要な意見が述べられた場合には、その意見を尊重しなければならない。
  5. 建築士事務所の開設者は、設計等の業務に関し生じた損害を賠償するために必要な金額を担保するための保険契約の締結その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

この問題は、平成29年二級建築士法規の問題で、いずれも建築士事務所についての設問ですが、設問2における委託者側への受託者側からの必要とされる重要事項の説明は、設計、工事監理業務の締結をする場合ですので、設問2は誤りです。
また、設問3、設問4、設問5は、いずれも平成27年度に建築士法の改正された部分で、改正後間もなく試験問題として出題されたものです。
なお、問題1、問題2の内容からも建築士法の問題では、一級、二級の試験問題間の差はほとんどないことがお分かりになると思います。 

次回は、管理建築士の業務等について、試験問題例を踏まえ解説することとします。